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紋章憑き~第二章【戦乙女ワグナスと三神】~

  第二章【戦乙女ワグナスと三神】

 リーンハルス王国へと続く街道の丁度真上を、隼人を背に乗せた乱丸が飛行する。南は『バティスガロ帝国』との国境を越えたところであった。乱丸はかなりの高度を飛んでいるのか、遙か地平線の彼方までよく見える。
 絶景パノラマの景色も見飽きたのか、乱丸の背中の上で仰向けで寝る隼人。二つに分かれた背ビレの間に、上手い具合に収まり寝ていた。背ビレがベッドで言う転落防止の役割を果たすため、乱丸がアクロバティックな飛行をしない限りは、転がり落ちる心配はなさそうだ。
 ここに来た当初は乱丸の背に乗る度に、やれ怖いだ、やれ高いだと、うるさかったのが信じられないくらい、今では余裕を見せていた。

 隼人とラルファが目指す目的の地。王都ログナス。
 賑わう街を見下ろす丘の上に、ジュナルベイル城はあった。
 城門の前、普段であれば二人の衛兵が配置されているのだが、現在は四人に増強されていた。しかもその四人、どうやら只の衛兵ではなさそうだ。黒光りする甲冑に身を包んだ4人の男達は巨大な剣を地に刺し、腕を組む。紫色のマントには『巨の紋章』の刺繍が施されている。王国が誇る『三神』が一人、『巨の紋章憑き』直属の精鋭部隊だと言うことを、それは示していた。
 突然吹いた強い風に煽られ、衛兵達のマントが靡いた。
 四人の衛兵は上空を見上げると、馬に翼を生やした、俗に言うペガサスが三頭、地に降り立とうとしていた。城門を守る衛兵、各々が手を挙げて迎えた。
 小気味よい蹄の音を立て、地に降りたペガサスを前にした衛兵達は、先程まで険しかった表情を緩ませる。いや、正しくはペガサスに跨る女性達を前にして表情を緩ませたと言っておこう。
 申し訳程度に、肩から胸を保護する甲冑を装備した女性達。その姿、戦場に赴く戦士と言うにはあまりにもかけ離れた容姿であった。頭には、純白の羽がふんだんにあしらわれたカチューシャ、唇には薄くルージュが引かれ、甲冑の下は薄手ながら上質な生地で仕立て上げられた水色よりも薄い色をしたワンピース。獣皮と白銀で加工されたハイブーツが無駄にゴツゴツしく、上半身とのギャップを感じさせる。青色のマントには『風の紋章』の刺繍が施されている。この三人の女性もまた、『三神』が一人、『風の紋章憑き』直属の精鋭部隊だと言うことを示していた。
「皆、今日もいつもと変わらぬお美しさで」
「そ、そんな、わたくし達などまだまだ……」
 ペガサスに跨る青髪の女性は頬を桃色に染め、初々しく照れる。
「ご謙遜なさるな。あなた達ペガサス隊の誇る美貌は世界一! これは周知の事実!」
 その言葉に同調した他の男達は、その通りだ、と何度も頷いた。
「わたくし達如きが世界一だなんて……滅相もないお言葉ですわ。世界一、その言葉が許されるのは姫様、そしてナスターシャ様のお二人だけですわ」
「おいおい、世界一なのに二人なのかい?」
 青髪の女性は不思議そうな顔で首を傾げる。
「変ですか? お二人のお美しさに優劣を付けるなんて、わたくし達には大罪を犯すようなものですわ」
「……確かに。違いないな」
 男達は腕を組み、頷いた。
「……だがなぁ、ナスターシャ様は――」
「ナスターシャ様が、どうかなさいましたか?」
「性格が……どうもねぇ」
「性格ですか? すごくお優しいのですが?」
「それはあなた達女性に限ってですよ。俺達男共には血も涙もない。まさに鬼のよう……ゴホン、失礼」
「まあ! 今のお言葉見過ごすことは出来ませんよ?」
 そう言いながらも女性達は口元を手で隠し、小さく笑った。
「こ、ここだけの秘密ってことでお願いしますよ?」
「うーん……考えておきますね? それではこの辺で――」
 青髪の女性はニコリと微笑みを返すと、後ろに引き連れた二人の女性と共に城内へと戻っていった。
「ち、ちょっ! 本当にお願いしますよ! おい! お前らもお願いしろよ!」
「え? オレ言ってないし。思ってもないし」
「オレも」
「ナスターシャ様はいい人だろ。お前がそんな目で見てたのが心底残念でならんよ」
「……てめぇら……」
 男の友情なんて所詮こんなものだ。この国の男性達は、高嶺の花であるペガサス隊のお眼鏡にかなうために、あの手この手と日々努力しているのだ。調子扱いてニヤニヤと喋って墓穴を掘った男に、男達は救いの手など差し伸べない。

 ある一室。そこには円卓の席に着く四人の姿があった。
 中央に座るのは、王国史上最も若くしてリーンハルスを治める『戦乙女の紋章憑き』リリス・アン・コルダトール王女であった。リリスの顔は不安に満ちていた。
 リリスの反対側、向かい合って座るのは、金髪の『火の紋章憑き』アルベセウス。
 リリスの右手側、斜め向かいに座るのは、栗色の長い髪を後ろで結い上げた『風の紋章憑き』ナスターシャ。
 リリスの左手側、斜め向かいに座るのは、赤い髪の『巨の紋章憑き』ガイナ。
 窓が多く、大量の外光が差し込む明るい部屋ではあったが、室内に漂う空気は重く、雰囲気は暗い。
 原因は、それぞれの目の前に置かれた三枚の報告書であった。アルベセウスとガイナの二人は腕を組み、目を閉じ黙る。ナスターシャは、一度目を通した報告書を再び手に取りパラパラと軽く流し見る。
 そんな中、最初に口を開いたのは赤髪のガイナであった。
「いらねぇ問題が増えたねぇ……」
 ガイナは報告書を手に取ると、一枚、二枚、三枚と広げて置き、見せる。
 どうやら報告書には、よろしくないことが書かれているようだ。ガイナは報告書を読んだ上で、一人話を進める。
「ま、この紙に書かれてる通り、『魔の紋章憑き』はもうじきここにやってくるだろう。お前らも既に分かってると思うが、姫様の持つ紋章の力を求めてだ」
「問題無い。私が相手をすればいいだけだ」
 アルベセウスは鼻で笑い一蹴した。
「はっ、お前ならそう言うと思ったよ」
 ガイナは笑う。しかし、すぐに険しい顔に戻る。
「だがな。過信だけは絶対すんじゃねぇぞ? お前はいつも相手を見下す癖があるが、最初から本気でいけ。そしてこの戦いに誇りなんていらねぇ、やばくなったら俺達を呼べ。すぐに呼べ。姫様の持つ紋章の力が外部に漏れることだけは絶対に許されねぇんだからな」
 少しばかり興奮したガイナは、アルベセウスの方に身を乗り出しテーブルをドンと叩いた。
「……『戦乙女ワグナス』の紋章。この紋章を持つ姫様自身には何ら力はない。だが、姫様の伴侶となる契りを交わした者には絶大なる力が与えられる」
 ガイナとアルベセウスの会話に、素知らぬ顔のナスターシャが勝手に割り込んできた。
「心配するな。私もアルベセウスも、何が一番重要であるかくらい分かっているさ」
「……ほんと頼むぜ」
 ガイナはイスに腰を下ろすと、残り二枚の紙を手に取った。
「……問題はこっちだ。東のザマ、西のダンテリューオが同盟を結んだことだ。これは流石にやばいことになるぞ。なんてったってザマには『剣の紋章憑き』、ダンテリューオには『盾の紋章憑き』がいるんだからな。まさかその二人が組むことになるとはな……俺達『三神』が束になっても勝つことは難しいぞ」
「問題無い。ザマとダンテリューオが同盟を結んだとしても、即、我が国へと侵攻を始めることはないだろう。知っての通り、ザマは南のバティスガロと戦争中だ。そんな中でザマが我が国へ攻撃を仕掛けるのは自殺行為と言っていいほど無能で無謀なことだ。十中八九、この二つの国の同盟はバティスガロを一気に叩く為のものであろう」
「……そうだといいんだがな。で? もしそうだとしてだ。アルベセウス、お前はどう思う? あのバティスガロが落ちると思うか?」
「まあ、まず無理だろう。バティスガロにもザマやダンテリューオに引けを取らぬ有能な紋章憑き達が存在する。中でも国王ザンドレッドに、『神子の紋章憑き』である、将軍サイ・ザ・レベリーの戦闘力は桁が違うからな。ただ、剣と盾との紋章憑きを抱えた国同士の同盟が、どれほどの相乗効果を得ることになるのかは私にも分からん。太古の時代、剣と盾の神は一心同体であり、『準・最強』の一人にも数えられていた程だからな」
「んだそれ。結局お前にも分からねぇってことかよ」
「ふっ、そう言うことだ」
「しかし――余所がどうなろうとも、勢力図が変わろうとも、いずれにせよ我が国は世界各国から狙われる宿命なのだ。日々覚悟だけは持っておかねばならない」
 ナスターシャのその言葉に、ガイナとアルベセウスは黙って頷いた。
「皆さんにはいつもご苦労をお掛けして、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです……ごめんなさい」
 不安げな表情で成り行きを傍観していたリリスが、謝罪の言葉を述べ、頭を下げた。
「姫様、お顔をお上げになってください。私達『三神』はおろか、この国の者達全て、姫様に絶対の忠誠を誓っております。故に謝罪の言葉など必要有りません」
 堅苦しい言葉を述べるも、ナスターシャの顔は優しく微笑む。そう、まるで可愛い妹に接するかのように。
「ナスターシャ……ですが」
「ですが、は無ーしっ。俺達を信じな」
 ガイナは明るい笑顔を作る。それは落ち込む妹を元気付けようとする兄のような笑顔。
「ガイナ……」
 リリスの目が潤む。アルベセウスが微笑む。
「姫様は十分すぎるほど頑張っております。まだお若いのに。それこそ、我々が姫様に頭を下げなければならないほどに。だから、我々はもっともっと頑張らなければ。でなければ、それこそ我々『三神』の名が廃れるってものです」
 先程までのクールな表情を一変させたアルベセウスは、先の二人と同様に優しい兄のような顔を見せた。
 若干一四歳の幼き女王。不幸にして両親を亡くし、王位を継いだリリスはまだまだ親の愛に飢えていた。
 そんな幼いリリスをいつも優しく支えてくれるのは、アルベセウス、ガイナ、ナスターシャの三人。リリスの親になることは出来ないが、せめて兄、姉として。
 その思い、語らずともリリスには伝わっていた。
 スカートをキュッと掴んだリリスは、肩を震わせて泣いた。一度流れ始めると止まらない。ボロボロ、ボロボロと涙は零れる。手で何度も何度も拭っても流れる、止まってはくれない。あれ? おかしいなぁ、とみんなに笑ってみせる。これ以上、みんなに心配を掛けさせたくないのに。涙は止まらない。リリスは小さく『ごめんなさい』と言うと、また泣いた。
 ナスターシャはリリスに近づく、気付いたリリスはナスターシャの体に抱きついた。ナスターシャはリリスの震える体をそっと優しく抱きしめる。
「大丈夫。大丈夫ですよ、姫様……」
 リリスは小さく、うん、うん、と頷き、泣き続けた。
 よしよし、と優しく頭を撫でるナスターシャ。
 ガイナとアルベセウスは微笑む。重たかった空気も、いつのまにか穏やかに和んだ空気に変わっていた。しかし、『三神』の内に秘めたる思いは、より強固なものへとなっていた。
[ 2011/08/17 13:24 ] 未設定 | TB(0) | CM(0)
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